サイトメガロウイルス
抗体スクリーニング

CMVとは

サイトメガロウイルス(CMV)はベータヘルペスに分類され、正式名称はヒトヘルペスウイルス5(HHV-5)である。CMVは様々な細胞・組織に感染することができるが、宿主域は狭くヒトCMVはヒトにのみ、マウスCMVはマウスのみにしか感染しない(図1・2)。感染細胞がフクロウの目(owl eye)の様に染色されるのが病理学的特徴である(図3・4)。
ヒトでは主に幼児時に感染し、ほとんどが不顕性感染の形で生涯に渡り潜伏感染する。感染経路として、母乳、小児の唾液や尿のほか、輸血や性行為による感染もみられる。一般的に、肝機能障害、肺炎、単核球症などの症状を呈するのは先天性感染児、未熟児、移植後、HIV感染、免疫不全などの患者である。先天性感染児以外は、難聴や網膜炎などの神経学的障害の発生リスクは少ない。

図1 CMV粒子(電顕)図2 CMV pp65抗原陽性多形核白血球

図3 フクロウの目図4 フクロウの目

妊婦のCMV抗体スクリーニング

サイトメガロウイルス(CMV)IgM陽性妊婦に対するカウンセリングや対応には、技術的、倫理的な問題が多いため、世界的にみても全妊婦に対するスクリーニング(universal screening)は推奨されてはいない。
施設によっては、抗体陰性者に対する感染予防、胎児感染ハイリスク(要精査・フォローアップ)児の抽出の目的で、妊婦スクリーニングを行っている。

妊婦健診でCMV抗体スクリーニングを行う目的は、以下の2つに分けられる。

1) CMV抗体陰性の妊婦に感染予防の教育・啓発を行う

妊娠初期にのみCMV IgGを測定し、抗体陰性者に妊娠中の初感染予防のための教育・啓発を行う。

2) 初感染の可能性が高い妊婦を抽出し、
  新生児精査・診断、フォローアップと治療を行う

図1のようなスクリーニング方法が考えられる。抗体測定の時期として、妊娠初期、16~18週、後期(34~36週)のうち、目的に応じて以下の要領で2~3回測定する。

図1 サイトメガロウイルスの妊婦スクリーニング法

①2回測定法:教育・啓発とIgG陽性化妊婦の同定。
妊娠初期 にCMV IgGを測定し、抗体陰性者に対して妊娠中の初感染予防のための教育・啓発を行う。抗体陰性者に対して妊娠後期にIgGを再測定し、妊娠中にIgGが陽性化した初感染妊婦を同定する。
IgG陽性化母体からの出生児の約40%は先天性感染に至る。児精査・診断と感染児のフォローアップや治療を行う。

②2回測定法:IgM測定により初感染妊婦を絞り込む。
妊娠初期に抗体測定を行わずに、全妊婦に対して一様に妊娠中の初感染予防のための教育・啓発を行う。妊娠16~18週にCMV IgG測定を行い、陽性者にはIgM測定を行う。IgG陰性者には妊娠後期にIgG再測定を行い、①に準じて扱う。

③3回測定法:教育・啓発とIgG陽性化妊婦の同定およびIgM測定。
上記②に、①の妊娠初期 CMV IgG測定と抗体陰性妊婦に対する初感染予防の教育・啓発を加える。

②や③の方法で、CMV IgM 陽性となった場合には妊娠中の初感染が疑われる。しかし、実際に本当の初感染であるのはIgM陽性者のおよそ3割で、それ以外はpersistent IgMを含めた偽陽性である。
IgM陽性妊婦には同意を得て、IgG avidity測定や胎児超音波精査を行う。
IgG avidityが低値(≦35~45%)であれば初感染がより強く疑われる。妊娠前からのCMV既往感染であっても、ウイルスの再活性化や再感染でも母体IgM陽性となることがある。したがって、IgG avidity 値にかかわらず、IgM陽性母体からの出生児に対しては精査・診断が推奨される。先天性感染児ではフォローアップや治療を行う。

IgG avidityとは?

Avidityとは抗原と抗体の結合力の総和のことである。感染初期において抗原と低親和性の抗体がまず産生され、感染の経過に従って高親和性の抗体が産生される。Avidityが弱ければ感染してから間もない時期で、母体は初感染である可能性が高い。Avidityを測定することで、母体のCMV感染時期を推定することができる。

例えば、ELISA系で尿素処理を用いてIgG avidityを測定することができる。蛋白変性剤(尿素など)を添加した洗浄液を用いて測定した吸光度を非添加の洗浄液を用いて測定した吸光度で除算し、avidity index (AI) % として表記する。AIが低値であれば、最近の感染であるとされる(図1)。

ELISA系におけるIgG avidity