沿革
2008〜2010年度
厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)
研究代表者:藤枝憲二、古谷野 伸(旭川医科大学)
「全新生児を対象とした先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染スクリーニング体制の構築に向けたパイロット調査と感染児臨床像の解析エビデンスに基づく治療指針の基盤策定」
2011〜2012年度
厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)
研究代表者:山田秀人(神戸大学)
「先天性サイトメガロウイルス感染症対策のための妊婦教育の効果の検討、妊婦・新生児スクリーニング体制の構築及び感染新生児の発症リスク同定に関する研究」
2013〜2015年度
厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業、2013〜2014年度)
日本医療研究開発機構(AMED)(成育疾患克服等総合研究事業、2015年度)
研究代表者:藤井知行(東京大学)
「母子感染の実態把握及び検査・治療に関する研究」
2016〜2018年度
日本医療研究開発機構(AMED)(成育疾患克服等総合研究事業)
研究代表者:藤井知行(東京大学)
「母子感染に対する母子保健体制構築と医療技術開発のための研究」
2019〜2021年度
日本医療研究開発機構(AMED)(成育疾患克服等総合研究事業)
研究代表者:藤井知行(東京大学)
「母子感染によるリスク評価や予防法を含む母子保健体制構築と技術開発研究」
2019〜2023年度
日本医療研究開発機構(AMED)(成育疾患克服等総合研究事業)
研究代表者:岡 明(東京大学)
「症候性先天性サイトメガロウイルス感染症を対象としたバルガンシクロビル治療の開発研究」
2022〜2024年度
日本医療研究開発機構(AMED)(成育疾患克服等総合研究事業)
研究代表者:森岡一朗(日本大学)
「母子感染のリスク評価と先天性感染の新たな診断・予防法の開発研究」
2024〜2027年度
日本医療研究開発機構(AMED)(臨床研究・治験推進研究事業)
研究代表者:森岡一朗(日本大学)
「先天性サイトメガロウイルス感染児の遅発性難聴を対象としたバルガンシクロビル塩酸塩ドライシロップの有効性および安全性を評価する多施設共同非盲検単群試験」
厚労省及びAMED研究班の実績(2024年6月現在)
開発研究成果の概要
妊婦のサイトメガロウイルス(CMV)やトキソプラズマ感染は胎児に移行し、母子感染症により中枢神経系などに重篤な後遺症をきたす。本研究班では、2008年から多施設共同開発研究を行い、先天性CMV感染は300人に1人発生し、主なCMV感染経路は同胞からであり妊婦への適正な予防策の普及が重要であること1)、我が国の妊婦のCMVの認知度およびCMV母子感染予防法に関する知識が乏しいこと2)、予想される先天性CMV感染の発生数に比べて実際に診断されている症例は極めて少ない現状を明らかにし3)、研究班としてCMVおよびトキソプラズマ妊娠管理マニュアルおよび一般向け感染予防のパンフレットを作成し配布するとともに、ホームページなどを通じた情報提供、相談窓口による医療相談を受け付け、国内での母子感染の医療の実施が可能な体制を構築してきた。2013年からは生後3週間以内の新生児CMV感染児の核酸検査技術の開発を行い4)、2018年1月に保険収載され新生児での標準的診療として確定診断法が確立された。同時に、我が国で初めて症候性先天性CMV感染児に対する抗ウイルス薬治療の効果を明らかにし5-7)、医師主導治験の準備を整え8)、2020年から実施し成果を得た9)。2019年からは、将来の先天性CMV感染児のマススクリーニングへの展開も見据え、ろ紙尿採取キットの開発を行い、採取率や安全性を検証し10)、2021年から社会実装を行った。このように先天性CMV感染に関する診断•治療技術開発は順調に進めてきている(2023年3月現在)。
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
森岡一朗
代表的な成果論文(文献番号順)
1. Koyano S, et al. Screening for congenital cytomegalovirus infection using newborn urine samples collected on filter paper: feasibility and outcomes from a multicentre study. BMJ Open. 2011, 1 (1): e000118.
2. Morioka I, et al. Awareness of and knowledge about mother-to-child infections in Japanese pregnant women. Congenital Anomalies. 2014, 54 (1): 35-40.
3. Yamada H, et al. Nationwide survey of mother-to-child infections in Japan. Journal of Infection and Chemotherapy. 2015, 21 (3), 161-164.
4. Fujii T, et al. Newborn congenital cytomegalovirus screening based on clinical manifestations and evaluation of DNA-based assays for in vitro diagnostics. Pediatric Infectious Disease Journal. 2017, 36 (10): 942-946.
5. Nishida K, et al. Neurological outcomes in symptomatic congenital cytomegalovirus-infected infants after introduction of newborn urine screening and antiviral treatment. Brain and Development. 2016, 38 (2): 209-216.
6. Ohyama S, et al. Efficacy of valganciclovir treatment depends on the severity of hearing dysfunction in symptomatic infants with congenital cytomegalovirus infection. International Journal of Molecular Sciences. 2019, 20(6), 1388.
7. Yamada H, et al. A cohort study of the universal neonatal urine screening for congenital cytomegalovirus infection. Journal of Infection and Chemotherapy. 2020, 26 (8): 790-794.
8. Morioka I, et al. Efficacy and safety of valganciclovir in patients with symptomatic congenital cytomegalovirus disease: A multicenter, open-label, single-arm study. Medicine. 2020, 99 (17): e19765.
9. Morioka I, et al. Oral valganciclovir therapy in infants aged ≤2 months with congenital cytomegalovirus disease: A multicenter, single-arm, open-label clinical trial in Japan. Journal of Clinical Medicine. 2022, 11(13): 3582.
10. Nagano N, et al. Clinical evaluation of a novel urine collection kit using filter paper in neonates: an observational study. Children. 2021, 8 (7): 561.