先天性CMV感染の診断
先天性CMV感染の診断は、生後3週間以内の新生児の尿でのCMV核酸検出法によって行う。生後3週間を超えると、先天性感染と後天性感染の区別が困難となる。血清中CMV IgM抗体やCMV抗原血症検査は先天性CMV感染児であっても約半数で陰性となることが明らかとなっており1,2)、その臨床検査診断としての信頼性は乏しい。
本研究班が企業と行った臨床性能試験結果にもとづき3)、2018年1月より、生後3週間以内の新生児尿を用いたCMV核酸検査として、「サイトメガロウイルス核酸検出」(ジェネリスCMV、株式会社シノテスト)が保険適用となった。この検査は、先天性CMV感染の診断を目的として、尿を検体として、等温核酸増幅法により測定した場合に1回に限り算定できる(保険点数825点;2024年6月現在)。感染症免疫学的検査のグロブリンクラス別CMV抗体検査をあわせて実施した場合には、主たるもののみを算定することになっている。この等温核酸増幅法によるCMV核酸検出の保険診療は、先天性CMV感染のリスクを有する生後3週以内の新生児を対象に確定診断を目的とした定性試験であり(表1)4)、スクリーニング検査としては使用できないことに注意する必要がある。株式会社SRL、株式会社LSIメディエンス、株式会社BMLなど全国で受託検査が行われている。
表1:先天性サイトメガロウイルス感染のリスクを有する新生児の例
先天性感染児の検査とフォローアップ
先天性感染と確定診断された場合は、引き続き、症候性・無症候性の鑑別のため、血算、生化学検査、CMV IgG・IgMなどの検査に加えて脳画像検査(頭部超音波、MRI、CT)、聴力検査(聴性脳幹反応など)および眼底検査などの精査を行う。先天性感染児の約半数は血清CMV IgMは陰性となる。
先天性CMV感染に伴う難聴はしばしば遅発性・進行性であり、幼児期発症例もある。また自閉スペクトラム症を含む様々な発達障害も経過を追うことで早期診断・早期介入することが出来ることから、小学校就学前くらいまでは発達や聴力の評価を定期的に行うことが必要である。
新生児聴覚スクリーニングで要再検(リファー)となった場合
我が国では聴覚障害の早期発見のため、自動聴性脳幹反応(AABR)による新生児聴覚スクリーニング検査が推奨され、多くの施設で実施されている。この新生児聴覚スクリーニングで、要再検(リファー)になる新生児の中に、先天性CMV感染による聴覚異常が含まれている。先天性CMV感染かどうかは、前述のように生後3週間以内の新生児の尿を用いれば、保険適用の検査で診断することができる。そのため、新生児聴覚スクリーニング検査は生後入院中に産科施設で行うことが望ましい。もし、入院中に施行できなかった場合、先天性CMV感染が原因かどうかを判定するためにも、できる限り生後3週までに新生児聴覚スクリーニング検査を行う。
新生児聴覚スクリーニング検査で要再検(リファー)となった場合は、出生した産科施設などで生後3週までに新生児尿のCMV核酸検査を保険適用で行い(生後3週を過ぎると、後天性感染と区別できない)、耳鼻咽喉科に聴覚の精密検査を依頼する。尿CMV核酸検査が陽性となった場合には、小児科に紹介依頼し、先天性CMV感染児としての精密検査を行う。
ガイドラインなどにより、新生児聴覚スクリーニングでリファー(要再検)の場合は、聴力の精密検査の前に生後3週以内に先天性CMV感染の確定検査の実施が推奨されている(図1)5)。
図1:新生児聴覚スクリーニングでリファー(要再検)時には先天性CMV感染の確定検査を実施5)
引用文献
1) Koyano S, et al. Screening for congenital cytomegalovirus infection using newborn urine samples collected on filter paper: Feasibility and outcomes from a multi-centre study. BMJ Open. 2011; 1: e000118.
2) Kobayashi Y, et al. Low total IgM values and high cytomegalovirus loads in the blood of newborns with symptomatic congenital cytomegalovirus infection. J Perinat Med. 2015; 43: 239-243.
3) Fujii T, et al. Newborn congenital cytomegalovirus screening based on clinical manifestations and evaluation of DNA-based assays for In Vitro Diagnostics. Pediatr Infect Dis J. 2017; 36: 942-946.
4) 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 先天性サイトメガロウイルス感染の確定診断のための生後 3 週間以内の新生児尿を用いた CMV 核酸検査が保険適用になりました(修正版). https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/CMV_Sindan_201912.pdf
5) 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業–BIRTHDAY サイトメガロウイルス,トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班ホームページ. http://cmvtoxo.umin.jp