国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業 ― BIRTHDAY

サイトメガロウイルス、トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班

新生児CMV感染マススクリーニング

新生児CMV感染マススクリーニングは、株式会社シノテスト サイエンス・ラボで受託しています(自費検査)。ご希望の医療機関は、以下のホームページよりお問い合わせください。

株式会社シノテスト サイエンス・ラボ
https://www.ssl-inc.co.jp/index.html
https://www.ssl-inc.co.jp/cmvtop.html

マススクリーニングのための新規採尿キットの臨床開発と社会実装1)

課題は、新生児の尿をいかに採取するかということであった。新生児や乳児の尿採取で採尿バッグによる方法は、便の混入や体動で剥がれてしまうため失敗が多い。固定のテープによる皮膚炎も問題となる。そこで、採尿シートに直径3.2 mmのろ紙を10個入れた定性試験用の採尿キットを開発した(PCT/JP2020/044137)(図12)。我々は、新生児138人を対象に、このろ紙を用いた新規採尿キットの臨床的評価をした。1回のオムツ交換の間に、採尿シート内の10個のろ紙中、青から白に色が変化したろ紙があれば尿採取できたとし、尿採取率を計算した。さらに、性別や採取日齢、在胎週数、出生体重、便の混入の尿採取率への影響について検討した。皮膚炎(発赤やかぶれ)の発症頻度を採尿バッグと比較検討した。排尿を認めた127人中ろ紙に変化を認めたのは122人で、尿採取率は96%であった。そのうち98人で、10個全てのろ紙の変化を確認できた(80%)。尿採取率は、性別、採取日齢、在胎週数、出生体重、便の混入の影響を受けなかった。採尿バッグと比較して、皮膚炎の増加はなかった(採尿キット2/68人、採尿バッグ5/68人、p=0.44)2)。つまり、ろ紙を用いた採尿キットは、安全に高率に尿採取ができることが明らかになった。このろ紙を用いた新規採尿キットで、リアルタイムPCR法でCMV DNAの検出を行うことで、新生児のマススクリーニングを行うことができた(図2)。新生児ろ紙尿CMVスクリーニング検査はすでに実装が完了し、2021年3月より株式会社シノテスト サイエンス・ラボで受託検査が開始されている(https://www.ssl-inc.co.jp/cmvtop.html)。

図1:新規採尿キットによる尿ろ紙検体の採取方法

株式会社シノテスト、国際特許出願PCT/JP2020/044137


図2:新生児ろ紙尿を用いたCMVスクリーニング検査

CMV, サイトメガロウイルス
写真は、https://www.ssl-inc.co.jp/cmvtop.html より引用

先天性CMV感染に対する新生児マススクリーニングへ向けて1)

疾患の疫学や自然歴、疾病負荷が明らかになり、確定診断法が標準化され、治療法が確立すると、先天性CMV感染症も早期診断・早期治療が重要となる。特に、妊婦スクリーニングが限界であり、児の確定診断が「生後3週以内」、治療の開始時期が「生後2か月以内」と限定されていることから、新生児マススクリーニングの導入を検討する必要がある。課題は、スクリーニングにより、多く発見される無症候性感染に対する対応と医療体制の整備、費用対効果の検証である。

引用文献

1) 森岡一朗ら: 新生児尿による先天性サイトメガロウイルス感染スクリーニング. 日本マススクリーニング学会雑誌(印刷中). 2023.
2) Nagano N, Imaizumi T, Akimoto T, et al: Clinical evaluation of a novel urine collection kit using filter paper in neonates: an observational study. Children. 8 (7): 561, 2021.

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