新生児CMV感染マススクリーニングは、株式会社シノテスト サイエンス・ラボで受託しています(自費検査)。ご希望の医療機関は、以下のホームページよりお問い合わせください。
株式会社シノテスト サイエンス・ラボ
https://www.ssl-inc.co.jp/index.html
https://www.ssl-inc.co.jp/cmvtop.html
先天性CMV感染児の生後早期診断の意義
前述のように、先天性CMV感染児の約2割は、症候性感染症として出生し、重度の神経学的後遺症を高率に残す。症候性先天性CMV感染症児に対し、生後早期からVGCV治療をすることによって聴力と神経学的予後を改善や進展を抑制できうる可能性がある1,2)。残りの約8割は、出生時に無症候性感染として出生する。しかし、そうであっても、遅発性に難聴、言語発達遅延、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの神経発達症を発症することがある3)。一見、無症候性と考えられる症例であっても、血液検査や頭部画像検査、眼底検査などの精査を行うことで、症候性と診断される症例も多い3)。それゆえ、先天性CMV感染児を早期診断できれば、症候性先天性CMV感染症の場合は抗ウイルス薬治療が行える。無症候性感染の場合には遅発性症状の有無を確認するフォローアップを行い、発症した場合、早期療育につなげることができる。
マススクリーニングのための新規採尿キットの臨床開発と社会実装
課題は、新生児の尿を採取する必要があるということであった。新生児や乳児の尿採取で採尿バッグによる方法は、便の混入や体動で剥がれてしまうため失敗が多い。固定のテープによる皮膚炎も問題となる。そこで、本研究班では、採尿シートに直径3.2mmの濾紙を10個入れた定性試験用の採尿キットを開発した(PCT/JP2020/044137)(図1)3)。このろ紙を用いた新規採尿キットで、リアルタイムPCR法でCMV DNAの検出を行うことで、新生児のスクリーニングを行うことを可能にできた(図2)。新生児ろ紙尿CMVスクリーニング検査はすでに実装が完了し、株式会社シノテスト サイエンス・ラボで受託検査が開始されている(https://www.ssl-inc.co.jp/cmvtop.html)。
図1:新規採尿キットによる尿ろ紙検体の採取方法
図2:新生児ろ紙尿を用いたCMVスクリーニング検査
先天性CMV感染に対する新生児マススクリーニングへ向けて3)
疾患の疫学や自然歴、疾病負荷が明らかになり、確定診断法が標準化され、治療法が確立すると、先天性CMV感染症も早期診断・早期治療が重要となる。特に、妊婦スクリーニングが限界であり、児の確定診断が「生後3週以内」、治療の開始時期が「生後2か月以内」と限定されていることから、新生児マススクリーニングの導入を検討する必要がある。課題は、スクリーニングにより、多く発見される無症候性感染に対する対応と医療体制の整備、費用対効果の検証である。
引用文献
1) 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業–BIRTHDAY サイトメガロウイルス,トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班ホームページ. http://cmvtoxo.umin.jp
2) 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業–BIRTHDAY.先天性サイトメガロウイルス感染症診療ガイドライン2023. 診断と治療社(2023年10月16日発行)
3) 森岡一朗, 他. 新生児尿による先天性サイトメガロウイルス感染スクリーニング. 日本マススクリーニング学会誌. 2023; 33: 19-30.