全妊婦に対するCMV抗体スクリーニング(universal screening)は、世界的にみても推奨はされていない。ただし、施設によっては抗体陰性者に対する感染予防と感染ハイリスク児の抽出の目的で、妊婦スクリーニングを行っている。CMV初感染が疑われた妊婦に対しては、抗体検査を行い胎児の感染リスクを判断しカウンセリングを行う。CMV IgM陽性妊婦へのカウンセリングは、過度に不安をきたさないよう慎重に行う。CMV IgG、IgM、IgG avidityを用いて全妊婦のCMV抗体スクリーニングを行っても、先天性感染児の半数以上が見逃される1)。
ハイリスクの妊婦と新生児のスクリーニング方法
ハイリスクの妊婦と新生児のCMVスクリーニング方法を図1に示す。母子感染予防法として、全妊婦にチラシなどを使ってCMV感染予防について教育と啓発をする(表1)。妊婦へのターゲット(標的)スクリーニングとして、先天性感染のハイリスクである超音波異常、切迫早産、早産、胎児発育不全、LBW、発熱・感冒症状を認める妊婦2,3)では、CMV IgGとIgMを測定する。IgG陽性であればIgM陽性陰性にかかわらず、新生児尿CMV核酸検査を保険適用で行う。新生児では聴覚スクリーニングでリファー(要再検)となった場合、生後3週以内に分娩施設などで尿CMV核酸検査を行う。リファーになる新生児の約5%が、先天性CMV感染であった2,4)。また、ハイリスク妊娠を扱う周産期母子医療センターでは、およそ新生児200人に1人が先天性感染で出生している1,5)ため、全新生児に尿CMVスクリーニングを行うことも可能である。ハイリスクの妊婦と新生児に対するターゲットスクリーニング、ないし全新生児の尿CMVスクリーニングを行うかは、施設によって判断する。現在、株式会社シノテスト サイエンス・ラボの専用採尿デバイスを用いた新生児尿CMVスクリーニングは、全国の分娩施設で実施可能である。
図1 妊婦と新生児のCMVスクリーニング方法
CMVを含んでいる可能性のある小児の唾液や尿との接触を妊娠中はなるべく避けるように説明する。
表1:CMV感染予防のための妊婦教育・啓発の内容
IgG avidityとは
Avidityとは抗原と抗体の結合力の総和のことである。感染初期において抗原と低親和性の抗体がまず産生され、感染の経過に従って高親和性の抗体が産生される。Avidityが弱ければ感染してから間もない時期で、母体は初感染である可能性が高い。Avidityを測定することで、母体のCMV感染時期を推定することができる。
例えば、ELISA法 で尿素処理を用いてIgG avidityを測定することができる。蛋白変性剤(尿素など)を添加した洗浄液を用いて低親和性の抗体を洗い流した後に測定した吸光度を、非添加の洗浄液を用いて測定した吸光度、つまり低~高親和性の抗CMV抗体全てを検出した値で除算し、avidity index (AI) % として表記する。AIが低値であれば、最近の感染であるとされる(図2)。
図2:ELISA法におけるIgG avidity
引用文献
1) Tanimura K, et al. Universal screening with use of immunoglobulin G avidity for congenital cytomegalovirus infection. Clin Infect Dis. 2017; 65: 1652-1658.
2) Uchida A, et al. Clinical factors associated with congenital cytomegalovirus infection: A cohort study of pregnant women and newborns. Clin Infect Dis. 2020; 71: 2833-2839.
3) Imafuku H, et al. Clinical and ultrasound features associated with congenital cytomegalovirus infection as potential predictors for targeted newborn screening in high-risk pregnancies. Sci Rep. 2020; 10: 19706.
4) Kitamura A, et al. Congenital Cytomegalovirus Infection and Maternal Primary Cytomegalovirus Infection in Universal Newborn Hearing Screening Referral Patients: A Prospective Cohort Study. Clin Exp Obstet Gynecol. 2022; 49: 259.
5) Yamada H, et al. A cohort study of the universal neonatal urine screening for congenital cytomegalovirus infection. J Infect Chemother. 2020; 26: 790-794.