国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業 ― BIRTHDAY

サイトメガロウイルス、トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班

医師主導治験

医師主導治験とは

ある疾患に対する薬の候補の効果や安全性、適正な投与量や投与方法などを確認する目的で行われる「臨床試験」のことを「治験」という。製薬会社は、この「治験」の結果をもって厚生労働省に申請し、薬として承認されることにより我が国で広く使用できるようになる。治験の準備から管理を医師自ら行うことを「医師主導治験」という。医師主導治験は、治療薬が必要とされているにも関わらず、疾患の希少性や特殊性のために採算性等が見合わず製薬会社が治験を実施しない薬や既に承認されている薬の適応症を拡大することなどを目的に実施されるものである。

バルガンシクロビルの有効性および安全性を評価する医師主導治験

本治験は、多くの患児(本治験では25人)において、その薬剤の有効性、安全性、使い方を最終的に確認する第Ⅲ相多施設共同非盲検単群試験として行われた。確認の方法は、一般にはプラセボ(偽薬)を用いて治療者や被験者ともにわからないようにして比較を行うが、本治験では実薬のみを用いて中身を明らかにした非盲検単群試験で行われた1)。また、本治験は、6施設(日本大学医学部附属板橋病院、東京大学病院、名古屋大学病院、藤田医科大学病院、神戸大学病院、長崎大学病院)で行われた。

1) 研究デザインとプロトコル

本治験は、選択基準(表1)を満たす中枢神経障害を呈する症候性先天性CMV感染児を対象にした。被験者の代諾者から文書により同意を取得した後に、バルガンシクロビル1回16 mg/kgを1日2回経口投与した。投与期間は6か月間とし、投与6か月後に定められた効果判定を行い、投与終了1か月後まで観察・検査を行った(図11)。詳細な観察・検査項目および実施スケジュールを表2に示す。主要評価項目は治験薬投与6か月時点の全血中CMV量のベースラインからの変化量、副次評価項目は聴性脳幹反応(Auditory brainstem response, ABR)に基づく聴力障害レベルのベースラインからの変化、全血中CMV量の経時推移、血漿中CMV量のベースラインからの変化量、尿中CMV量の経時推移、血小板減少・肝機能障害・網膜炎の改善、発育に係る指標であった。安全性の評価項目は有害事象・副作用であった(表31,2)

表1:選択基準

 

図1:治験デザイン

 

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表2:観察・検査項目および実施スケジュール

 

表2:観察・検査項目および実施スケジュール

 

表3:評価項目

 

2) 主な結果の概要

主な結果を示す2)。同意取得が29例に行われ、そのうち無症候性等の不適格症例4例を除いた25例が登録された。このうち1例が治験薬投与開始前に別疾患を発症したため、24例にバルガンシクロビルの投与が行われた。好中球減少のため投与中止となったのが3例(12%)、前述の投与開始前に別疾患を発症し投与困難と判断した1例(4%)が脱落となった。
主要評価項目である投与6か月時点の全血中CMV量のベースラインからの変化量の中央値は-246.0 IU/mLであった(n=24)。重要な副次評価項目であるABRに基づく聴力障害レベルのベースラインからの変化は、best ear assessment(各症例の両耳のうち成績の良い方の評価)は、〔改善+不変(聴力は正常のまま)+不変(聴力障害が同程度)〕の割合は100.0%(24/24例)、total ear assessment(症例の両耳での評価)は、〔改善+不変(聴力は正常のまま)+不変(聴力障害が同程度)〕の割合は93.8%(45/48耳)であった。
副次評価項目では、全血中CMV量(log10)の平均値は、開始前の2.31 IU/mLから、1週後に1.00 IU/mLに減少し、3週後に0.24 IU/mLに減少した後は増減を繰り返し、8週~26週は0.32 IU/mL以下で推移した。なお、投与終了1か月後は2.51 IU/mLであった。投与6か月後の血漿中CMV量の平均値は、-436.9 IU/mLであった。尿中CMV量(log10)の平均値は、開始前の4.71 IU/mLから徐々に減少し、17週ではすべての症例で尿中CMV量は測定限界値以下に低下したが、26週に0.30 IU/mLに増加した。なお、投与終了1か月後は2.29 IU/mLであった。ベースラインで認められた血小板数減少、肝機能障害、網脈絡膜炎は各1例であり、いずも投与6か月後に改善が認められた。発育に係る指標は、身長・体重・頭囲はいずれも順調な成長を示した。運動発達段階の到達では、寝返りは13週の4.8%(1/21例)から徐々に増加し、26週には75.0%(18/24例)に達した。首すわりは、6週の4.3%(1/23例)から徐々に増加し、26週には91.7%(22/24例)に達した。
有害事象は19例に発現し、発現率は79.2%であった。重症度別ではGrade 1が10例(好中球減少5例を含む)、Grade 2が8例(好中球減少4例、上咽頭炎、中耳炎、脂漏性湿疹、膿痂疹とおむつ皮膚炎が各1例)、Grade 3が1例(好中球減少)であった。副作用は11例に発現し、発現率は45.8%であった(好中球減少10例、貧血1例)。死亡例はなかった。
投与6週時点で、服用90分後血中ガンシクロビル濃度(バルガンシクロビルの活性代謝物)の平均値は、全体(23例)が4.59 µg/mLであり、「有害事象あり」症例(18例)では4.84 µg/mL、「有害事象なし」症例(5例)では3.71 µg/mLであった。

以下の文献は、オープンアクセスであり、参照されたい。

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