国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業 ― BIRTHDAY

サイトメガロウイルス、トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班

CMV母子感染と出生児の後遺症リスク

CMV母子感染は、TORCH症候群の中で最も高頻度に見られ、先天性感染児に神経学的な後遺症をきたす。CMV抗体が陰性の妊婦のうち、1〜2%が妊娠中に初感染を起こし、そのうち約40%が胎児感染にいたる。胎児感染例の20%が症候性に、80%が無症候性の先天性感染として出生する。出生児の症状としては、低出生体重、肝脾腫、肝機能異常、小頭症、水頭症、脳内石灰化、紫斑、血小板減少、貧血、黄疸、網膜症、白内障、肺炎、痙攣などである。症候性の先天性CMV感染児の90%が、無症候性児の10〜15%が精神遅滞、運動障害、難聴などの後遺症をきたす。妊娠前から抗CMV抗体が陽性(既往/慢性感染)の妊婦であっても、再活性化ないし再感染によって先天性感染や児の後遺症を起こすことがある(図1)。臨床的に有用なワクチンは現在開発中である。
日本における妊婦の抗体保有率は1990年頃には90%台であったが近年70%に減少し、妊娠中に初感染を起こしうる妊婦の割合は増加した1,2)

図1:CMVの母子感染と出生児の後遺症リスク

引用文献

1) 東 寛, 高梨美乃子, 神前昌敏, 佐藤博行, 石丸文彦, 山田秀人. 1996年から2009 年における妊婦のサイトメガロウイルス抗体保有率の推移について. 日本周産期・新生児医学会雑誌 2010; 46: 1273-1279.
2) Numazaki K, Fujkawa T. Prevalence of serum antibodies to cytomegalovirus in pregnant women in Sapporo, Japan. Int J Infect Dis 2002; 6: 147-148.

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